院長コラム

閑話休題

今まで歯科に関するワンポイントをコラムで書いてきましたが、閑話休題と言うことで私の昔話をしましょう。
私は東京生まれの東京育ち、大学時代は北海道の札幌に過ごし、お免状を頂戴してからはいろんな経験をさせてもらいました。
卒後は北海道、東京、九州と色々の土地で勤務経験をしました。
中でも一番印象深く記憶しているのが九州でした。
古い話になりますが、私の母方は会津の出なので子供の頃より正直言って九州に対して偏見をもっていました。(この意味判るかな?)
しかし縁があってか佐賀県の玄海灘沿いの小さな漁港の町に院長として赴任することになりました。
誰一人も知り合いが居ない、見ず知らずの場所で数年を過ごす事になったのです。
この町の沖合いには幾つもの無医村の離島が点在し、患者さんはマイカーならぬマイボート(漁船)でやって来るのにはビックリ!!
赴任第1日目から言葉の壁に突き当たりました。

患者:「あのくさ、奥歯の金歯がほげたつよ」(あのね、奥歯に穴があきました)

私 :「・・・・・・・はぁ~?」

患者:「だけんね、かっぱげたつよ! こっぱげたと!!」(だからね、金属がはずれて穴があいているのです!)

私 :「・・かっぱ・・げた・・!?」

そんなやりとりの後、患者さんは身振り手振りで外国人に話すように、ゆ~っくり話てくれるのですが、単語自体が理解できず泣きそうな事が何回もありました。 それからは地元のおばちゃんの助手さん(漁師さんのおかみさん)が通訳となりました。
ホームシックになりながらも、海の美しさや新鮮な魚になぐさめられ九州の魅力にのめり込んでいったのです。
漁船に便乗して、離島に往診したり、いままで院長のもとでの勤務医から自分一人でなんでも処置しなければならないプレッシャーと戦いつつ、今おもえば開業医になる為の訓練を重ねていたんだと思います。 一番よかったのは私を必要としている所で必要としている人達に囲まれて仕事ができたことです。
いまあるのは、あの頃の皆さんのお陰と感謝しています。よき臨床医はよき患者さんに育てられるのです。
やりがいのある数年を過ごし、帰郷・・身一つで赴任してあれから9年・・家内(もちろん九州の産)と三児にめぐまれました。
そんな縁があってかどうか、隣の八百屋さんは鹿児島、患者さんは長崎・熊本・佐賀・福岡と九州勢が多く、賑やかな医院になりました。
今は、なにかの縁があって開業したこの土地で、誰かの為に必要とされる人間になりえれば無上の幸せと思っています。

Copyright(c) 2013 松田デンタルクリニック All Rights Reserved.